FC2ブログ
プロフィール

くりあじ

Author:くりあじ
自嘲が止まらないデイドリーマー。

↓三日に一回くらいは見るようにしたいアド
kuriajiあっとまぁくgmail.com
あっとまぁくを@に換えて。

最新記事

web拍手

気に入ったものがあったら気軽にポチッとお願いします。

何か一言あるときもこちらからどうぞ。そのとき、コメントの公開が嫌な方はその旨を併記してください。

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

カテゴリ

FC2カウンター

FC2カウンター

現在の閲覧者数:

リンク

検索フォーム

RSSリンクの表示

QRコード

QRコード

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--.--.--    [ Myカテゴリ:スポンサー広告 ]

30分レスがなかったら霖之助さんは私の婿

30分レスがなかったら霖之助さんは私の婿



「ではこうしましょう。今から四半刻の間、ここに客が来れば先ほどの言葉は聞かなかったことにしますわ。けれどもしそうならなかった場合、貴方には私と番いになっていただきます」

 その言葉はあまりに理不尽な要求をしており、もちろん反論はしようとしたのだけれど、問答無用でカウントダウンを始められてしまった。
本来ならこのような一方的かつ圧倒的不利かつ勝ち負けの利益が釣り合わない賭けは反故にするのが当然だ。
しかし今回は発端が発端だけにそれができない。僕は例えどれほど不利な条件であろうともこれに乗らなくてならない。

「えーと、今は十四時五十七分三十……今四十秒になりましたわ。では切りよく十五時半までにしましょう。はい、よーい始め。始めてしまったものは仕様がありませんわね。いかが致します? 貴方が反故にしたいと仰るのなら私は別にそれでもかまいませんわ」

 この言葉を吐いたときの紫の笑顔はこれまでのものよりはるかに晴れやかなものだった。非常に憎たらしい、もとい不吉なことに。


 時計の針を見ると長針がもう一を指していた。まだ幾ばくも経っていないと思いきやこれだ。この具合ではすぐに決着がついてしまうかもしれない。
 そもそもなぜこのような事態になってしまったかというと、偏に僕の不注意の責任である。
 人間――まあ僕は半分だけだが――ひとりでいると独り言が多くなるものだ。
ここ最近は魔理沙も霊夢もその他の客も姿を見せず、また、寒くなってきたのでそろそろストーブを出そうかと考えていたらついついポロリと出てしまったのだ。

「また今年も彼女の世話にならなければならないのか……。しょうがない、あきらめるか」

 呟いた瞬間僕のすぐ耳元で、年端もいかぬ少女のような、あるいは妙齢の女性のような、あるいは年老いた老婆のような声が囁いたのだ。

「あら、お言葉ね。私は別に貴方と取引をしなくても困らないということをお忘れになって?」

 ぞわりと体中を這うように寒気が駆け抜け、相手が空間なんてお構いなしに割り込んでくる存在だということを思い出すころにはその妖怪少女は僕の目の前に、居て当然だと言わんばかりにしれっと佇んでいた。

「ああ、ショックですわ。まさか貴方にそのように思われていたなんて。余りのショックに燃料を取り出す隙間を開ける方法を忘れてしまったらどうしましょう」

 憂いを帯びた表情、頬に軽く添えた手袋に包まれた細い指、そして流し目。どれもが完璧に計算されているようで、だからこそ非常に胡散臭くわざとらしい。
きっとわざとだと見抜かれることまで計算してやっているに違いない。
 何事かぼやいてはこちらを流し見て、流し見ては何事かをぼやく。アリジゴクといい蜘蛛といい、罠を張る生物は山ほどいる。
しかしこれほどまでに分かりやすい罠を張るのは幻想郷内外世界広しと言えどもおそらくこの少女くらいなものだろう。そしてそれをわかっていながらかからざるを得ないのもおそらく僕くらいだ。

「いやいや、今のは失言でした。燃料代をおまけしますから水に流してもらえないかい?」
「外の燃料を自由に使える私が本当に欲しくて品物をもらっていると? それはいくらなんでも楽観しすぎですわ。普段はあくまでも貸しを作らないためのもの、でも今回は不機嫌なので少しわがままを言わせてもらいますわ」

 不機嫌と言いつつ不吉な表情を崩さない。笑っていてほしくないというのも奇妙な話だ。

「ではこうしましょう――――――」



 そして今に至る。長針はすでにほぼ水平になっており、その姿は軌道と相まって僕に断頭台を彷彿とさせた。もしくは切腹の介錯か。
 ふと横を見ると、ただでさえ客が少ない香霖堂に客が……と無理難題を吹っ掛けてきた妖怪少女が軽く目を閉じて、牡丹のようにスカートを広げて椅子に腰掛けている。

「番いが気にいらないのなら夫婦でも連れ合いでも匹偶でも何でも構いませんわ。それともお嫌なのは私? 誰か心に決めた方がいるのかしら」

 僕の視線を感じたのか、急に声をあげた。目は閉じていたはずだがこの娘にそんなことが関係あるはずもない。
 そして質問の答えとしてはノーだ。だがあの聞き方ではもしかして、ここで肯定すれば引いてくれる気なのかもしれない。

「そう、それは良かった。私にもまだ目は残されてますのね」

 ……人の思考を読むことができるのではないだろうか? もしそうならぜひやめてほしい。


 そもそもなぜこんなことを始めたのだろうか。僕にもあちらにもメリットなどこれっぽっちも見当たらない。
うちのほとんどの道具は彼女の興味の対象にすらならないだろうし、考えられるとしたら“剣”くらいなものだろうか。
 確かにあれはとんでもないものだし、たまたま僕が手に入れられたのは非常に大きな僥倖としか言えない。しかし紫がその気になれば僕を始末して奪うなど容易いことだ。
 幻想郷のバランスを崩すことを好まないとしても、僕を殺さない程度まで痛めつけて霧雨の剣を献上させるくらいは朝飯前のはずである。
いや、能力を考えれば本来のギリギリを超えた拷問以上の拷問も可能だろう。なまじ丈夫なだけに精神崩壊の危機や過剰な肉体的苦痛を与えられるだけで僕はすぐに差し出してしまうはずだ。

 しかしそれはしなかったのである。となるとやはり狙いはそこではないのだ。
 他で考えられることと言うと……僕自身だ。僕が「外の世界に思いを馳せている」ということ自体が紫にとって不都合なのだ。そういえば初めて出会ったときからそのようなことを仄めかしていた。
 どうせ動向に気を使わなければならないならいっそ手元に置いて下男として労働力にしてしまえ、というのが今回の話なのだろう。たまったものじゃない、もしそうなればもちろん香霖堂は畳まなければならないだろう。
それでは小さいながらも店を持つために味わった労苦が水の泡だ。外の道具と触れ合う時間も削られてしまうだろう。

 そこまで考えてはたと閃いた。彼女のそばにいればむしろ外の道具を知る機会が多くなるぞ、と。
 紫は外の燃料を大量に持っているし、外の世界の道具についても詳しいようだ。そして先程本当はうちの道具にさして興味がないと言っていた。つまりこれは外の世界の道具もたくさん保有しているということに他ならない。
それにうまくなだめすかすことができれば幻想郷から外の世界に行くことも可能なはずだ、その際は帰りの心配も一切いらない。
 実際はどうであれ、言葉通りに取れば「夫婦」である。夫婦なら彼女の持つ外の世界の道具は全て僕のもの、いや夫婦の共有財産である。
共有財産なら多少勝手に使ったところで文句を言われることはないだろう。

 そして紫自身が道具の恩恵を受けている可能性も非常に高い。つまりこの賭けは勝っても負けても僕は快適な生活を送れることが確定していたのだ。
 どうせ外に修行に行くならこの店もしばらくは休業にしなければならない。外の世界の前に修行する場所がひとつ増えるだけだ。そう考えればこの話は悪い話ではない、
むしろこちらからお願いして世話になるべきようなことだ。
 雇用主に関しては……この際目を瞑ろう。どう考えてもメリットの方が遥かに大きい。



 時計の針は既に二十五分を指し示していた。

「残り五分ですわ。そろそろ腹積りはおできになって?」
「なに。勝利条件を考えれば十秒もあれば逆転できるんだ。まだ焦るような時間じゃない」

 たとえどう思っていても、そしてそれを読まれていたとしても僕は「勝負に負けてしぶしぶ行った」という振りをしなくてはならない。
「勝負に負けてしかも自分から喜んで行った」ではこれからの生活に支障が出る。

「二十七分四十秒。本来ならここで勝負が決まっていましたわ」
「切りよく、と言い出したのは君の方だ。負けてからそれを恨み言のように繰り返されても僕は知らないよ」

 とはいえそんなに客が多い店ではない。すぐにカウントダウンが始まった。

「四十秒……三十秒……二十秒……十秒」



 カランカランッ――
 正直に言えば予想外だった。いくらそろそろ来るかもしれないと思っていたとはいえ、まさかこんなタイミングで来るとは思わなかった。
が、店の中に入ってきた姿を見て僕は計画にさほど変更がないことを悟った。

「おう? 紫がひとりでこんなとこにいるなんて珍しいな。なんかよからぬことを考えてるんじゃないだろうな」
「やあ魔理沙、今日は客かい?」

 魔理沙が何か買い物をしていくなんてめったにないことだからだ。

「いや、客じゃあないが客だぜ」

 予想通りだ。
 これで僕は哀れにも賭けの代償として紫に引き取られて至極快適な、いや辛い下男生活が待っている。

「残念ですわ。余計なことを言わなければ私の勝ちでしたのに」

 黙って僕と魔理沙の会話を見ていた紫が立ち上がると同時に言い放った。

「へ? 今の言葉を聞いてなかったのかい? 魔理沙は客じゃないらしい。賭けは僕の負けさ」
「あら、私は香霖堂に、とは一言も言ってませんわ。霖之助さんに客が来たならそれは私の負けということ。今回は潔く引き下がりましょう」

「あー、話が見えないんだが」

 魔理沙が怪訝な声を出すので一瞬だけ目をやり、すぐに視線を紫に戻すと、そこには既に芍薬のような姿勢の立ち姿はなかった。

「逃げられた……」
「なあおい。逃げられたってどういうことだ」

 魔理沙の言葉は耳には入るが脳にまで届かない。なにやら苦情めいたものを言っていたのはわかるが、僕の脳みそは別のことに使われていた。


 なぜこうもあっさりと引き下がったのか。確かにどこに客が、とは言及していなかったから僕が物言いをするかもしれない。
だが彼女が引き下がらねばならないようなことでもない。むしろ普通なら勝ちを強硬に主張するものだ。

 ならば答えはひとつだ。最初から本気ではなかったのだ。そう考えるしかない。
 冷静に考えれば考えるほどそれしかない。だってそうだろう?

 たまたま時間を延長し、たまたま魔理沙の接近を見逃し、たまたまそのわずかな時間に魔理沙が訪れた。彼女の言い分が全て真実だったとしてもこれだけの偶然が重なるわけがない。
今にして思えば紫の能力なら魔理沙の来る時間を十秒遅らせるように邪魔することも、二十分早く来るようにすることも、それどころか誰ひとりここに寄せ付けないことも簡単なはずだ。
 それに僕の独り言を聞きつけることができたのに、肝心の賭けの最中に周りの警戒を怠るわけがないじゃないか。

「くそっ。一体なにがしたかったんだ……」
「なあ! なあってば! おい香霖!」




「最初のアプローチとしては上出来ね」

 すでに自分の住処へと帰って来ていた紫は一人、声をあげた。

「無理やり手に入れてもつまらないもの。すぐに私に愛の言葉を囁きたくなるようにして差し上げますわ、霖之助さん」

 今のところは自分の持つ物や能力に対してだけで良い。しかしいつの日か彼の興味を自分自身に向けると決意を新たにし、紫は次回の策を練り始めた。





続かないよ
スポンサーサイト
トラックバック(0)   コメント(0)   2009.12.27    [ Myカテゴリ:東方SS ]

コメントの投稿













管理者にだけ表示を許可する

Template Designed By
ぐらいんだぁ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。