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三太苦労す

 蛍雪の功という言葉がある。この言葉の通り、雪というものは意外なほど光を発する。
その光は今のように雪を降らせる分厚い雲によって太陽が隠されていてもなお、十分な明かりを提供してくれている。
この言葉ができることになった元の人物は雪の夜も勉学に励み難しい試験に挑み、見事合格した人物だという。ならば雪の日に明かりも点けず、読書に励む僕もまた大成する人間なのではないだろうか。

「いや、そんなことはないな。寂れた道具屋の店主が関の山だぜ」

 ストーブの前に縮こまっていた不吉な配色の娘が言う。わざわざこんな日にうちにまでストーブにあたりに来るあたり根性がある。
何も言ってはいないのに的確に否定しないでほしい。

「霖之助さんは考えてることがわかりやすすぎるのよ。そんなことでこの店やっていけるの?」

 湯呑みを傾けながら目出度い配色の娘が言う。
割と寒そうないでたちをしている。そのことを注意してみたことはあるけれど、今のところ改善の兆しは見られない。

「そんな心配をするならツケを返してくれないか」
「そのうちね」

 馬耳東風である。むしろどことなく他人事と思わせる口ぶりだ。
もしこの店が立ちいかなくなるとしたら、きっとその原因はツケではないだろうか。


「そんなことより香霖、聞いてくれ。昨日話した三太のことだが、私のところにも来たんだ! もしかしたらいいやつっていうのは本当なのかもしれないな」

 かなり興奮した様子でしゃべり出す。どうやら相当嬉しいことだったらしい。

「魔理沙のところじゃなくてうちの神社ね。サンタは日本のものじゃないらしいけど、神社に来てもいいものなのかしら」
「いいんじゃないかい? そもそもサンタについてふれ回ってたのは山の上の神社の巫女だ。どうやら昨日は妖怪も巻き込んで盛大に馬鹿騒ぎをしていたらしいよ」
「そんなものよね。でも能動的に騒ぐなんて外はどうなっているのかしら」

 おおよそ巫女らしいことは自分のためにしかしない霊夢がそんなことを言っても説得力がない。だが一応の自覚はあるようだ。


 大声で顛末を語り始める魔理沙と、自分のことを棚に上げて新入りの意識の低さを嘆く霊夢を見つつ、僕はやれやれと足首を軽くなぜた。





――時間は丸一日ほど遡る。


「なあなあなあなあ。三太って知ってるか?」

 とびっきりのごちそうでも見つけたかのように顔を輝かせながら魔理沙が言う。
しばらく続いた雪だが、今日は運よく晴れ間。外に積もった雪が眩しいことこの上ない。

「……初耳だな。何なんだい、その三太とやらは」

 また勝手にお茶を飲んでいた霊夢が酸っぱい顔でこちらを見てくる。おそらくなんども聞かされたのだろう。
もし僕が知っていると言ったところで魔理沙は「まあそう言うなって。三太っていうのは~~」と勝手に話し出すだろう。もしくはひどくつまらなそうな顔をしてむくれるのだ。

「三太っていうのはな、年の暮れの二十四日の夜に世界中のいい子の家に賄賂を贈るやつらしいんだ」
「なかなか良い言い回しだね」
「だろ? きっと将来のための根回しに違いないぜ。なんて言ったって、そのいい子の基準が三太の独断なんだからな。お前は閻魔かって話だ」

 要は自分が三太にプレゼントがもらえるか不安だということなんだろう。
僕は少し意地悪な質問をしてみることにした。

「でも去年まではそんな話はしてなかったし、もらったこともないと言っていたじゃないか。三太からしてみればとっくに選外なんじゃないかい?」
「ところがどっこい。三太ってのは悪いやつでな、プレゼントをもらうにはこちらからもそれなりの接待をしなきゃいけないらしいんだ。ええと、なんだっけ霊夢?」
「クッキーや暖めた牛乳、ミルク粥なんかもいいって話ね。自分で何度も言ってたじゃない」
「そうだったそうだった。去年まではそれをやってなかったからな。今年はバッチリだ」

 右手に提げた手提げを見る。重そうなそれの中身は、ついさっきツケで売った様々な道具だ。その中には小麦粉やバターも含まれている。
和食派を自称する魔理沙の家にはそのようなものがなかったらしい。
 ……三太の接待に使う食べ物として、うちに置いてある材料を使うことの是非に関してはあえて指摘しなかった。

「しかしそんな与太話、どこで仕入れてきたんだい?」

 そうだ。いままで知らなかった話を知るには幻想郷の情報網は狭すぎる。天狗たちの新聞もそういう面ではほとんど価値がないと言ってもいいだろう。
紅い館の住人か、もしくは――

「緑の巫女だ」

 緑の巫女らしい、僕も彼女がその話をしていることは知っていた。

「というわけで今日神社で酒盛りをするんだがどうだ? 迎え酒だ」
「それもいいけど実は野暮用があってね。里の方に顔を出さないといけないんだ」

 わざとらしい誤用については無視をした。

「里?」

 魔理沙と霊夢が同時に声をあげた。

「怪しいわね」
「ああ、怪しいぜ」
「何かよからぬことでもたくらんでそう。でなきゃ霖之助さんが自分から里なんて行くかしら」
「ほら、早く吐いて楽になれよ」

 ずいぶんな言いようだ。僕だってボランティアくらいする。
ただ体が言うことを聞いてくれず、詰め寄ってくるふたりから無意識に視線がずれてしまう。

「失礼なことを言ってくれる。ただボランティアに行くだけさ」
「ああ、よほど謝礼がいいのね」
「それなら納得だ」

 発言と同時に納得された。もしかして僕自身が思っているほど信用はないのだろうか。
しかしボランティアというのは実は嘘ではない。サンタの話は里にも届いているようで、サンタの扮装をして子供の相手をしてやってほしいと頼まれたのだ。
髪が白っぽくて普段見慣れない男が僕以外知り合いにいなかったらしい。
そんな消去法での選ばれ方や煩わしそうな仕事だが、みんなのためになるなら僕は協力をするつもりだ。


 謝礼はあくまでもそのついでに過ぎない。
謝礼を受け取ることで相手に気を使わせないようにするのだ。
ボランティアを報酬目的の仕事という形にすることでみんな幸せになれるのだ。
だから僕は謝礼を受け取らねばならない。例え僕自身がそれを望んでいなかったとしても。





「お疲れ様でした」

 ボランティアの依頼主である慧音が珈琲を淹れてきた。
目の前に置かれたコーラに似た色の液体からは湯気と芳しい香りが立ち昇っている。

「本当に疲れた……。いつもあんな感じなのかい?」
「まさか。普段見慣れない貴方が普段見慣れない服を着ていたのが珍しかったのでしょう」

 霖之助の向かいに座る。
未だ扮装のままの霖之助だが、慧音は今日は変わらずずっと私服、というかいつもの服だった。何着も同じ服を持っているのだろうか。

「しかしまさか貴方がこの話を引き受けてくれるとは思いませんでした」

 珈琲の香りを十分に楽しんでからカップを傾け、慌ててミルクを注ぐ。
霖之助はその様を小さく笑う。

「じつは子供が大好きなんだよ」
「嘘ですね」
「即答とはずいぶん失礼な話だ」

 彼は子供は嫌いではないが、やかましい声をあげる子供はあまり好きではないだけである。

「でもこういうのも何ですが、報酬も貴方のご期待に沿えるようなものではないと思うのですが」

「ああ、そこは気にしないでくれ。何しろこちらが提示した条件なのだから」

「ではいいのですか? その……サンタクロースの衣装のみで」

 霖之助の脳裏に、半月ほど前から何度も何度も「三太の名字って何なんだろうな」と、「三太に来てもらうにはどうすればいいと思う?」と、言い続けてきた少女の姿がよぎる。
彼女は何もなければさぞかしがっかりするだろう。
本物が現れるならそれが一番いい。本物の前に偽物がひとり顔を出すだけだ。
本物が現れないなら、偽物が本物になるまで。

「布が必要のないときに山ほど手に入って必要なときにほとんど手に入らないとは、なかなかうまくいかないものだね」

 霖之助はそうとだけ答えて、それまで手をつけていなかったカップを一気に空にした。


「……妬けちゃうな」
「ん? 何か言ったかい? 少し考え事をしていた」
「私が小さい頃にこの習慣が伝わっていたら、私にも素敵なサンタさんが来てくれたかもしれないのにと言ったんですよ」

 慧音は時計をちらりと見る。いつの間にやら結構な時間になっていた。

「そろそろ行ったらどうです? 小さなお姫様が待ちくたびれてしまいますよ」
「待ちくたびれることはないだろうけど、酔い潰れてるかもしれない。じゃあここらで失礼しようかな」
「わかっていると思いますが、巫女の分のプレゼントを忘れてはいけませんよ。もし忘れたら死ぬまで笑いの種にします」

 そこまで馬鹿にしないでくれと言い残して、霖之助は揚々と出て行った。

 慧音はため息をひとつ、カップをふたつ片づける。





 想像以上に重いサンタ姿のまま、僕は雪をかき分けて歩いていた。
ふたりは共に神社にいるのは昼の話しで分かっている。分かっているいるのだが博麗神社には参拝客がほとんどいない。
よって道の雪かきなどされているわけがなく、動きづらい服装で歩きにくい道を進むはめになっていた。
 神社の近くまで来てから着替えればよかったと後悔し始めたちょうどその時、まるで見計らったかのようなタイミングで神社の背中が見えてきた。
それで僕はやっと着いたという安堵と平時よりどれほど時間がかかってしまったかという思考で、気を抜いてしまった。

 一瞬何が起きたか分からなかった。それでも端的に言うと、不意に崖から突き落とされた人というのはもしかしたら、こんな気分になるのではないかという体験をした。

 数秒ほどの時間を置いて、どうやら僕は罠にかかったらしいという結論が出た。
右足首のみが何かによって縛られて逆さに浮いている、という状況になりそうなのはそれだけしかない。
幸い鳴子のような装置とは連動されていないらしい。罠を仕掛けた者がすぐには現れないようだし、時間をかければ脱出自体はできそうだ。
 しかしこのひとつだけで罠が終わりだとは思えない。明らかに人間用のトラップを仕掛けてきている。
相手は……あの子らは三太を捕獲しようとしているようだ。引き下がるしかないだろう。
 罠から抜け出した後、しょうがないのでその場にプレゼント、彼女風に言うなら賄賂、状況的に言うなら献上品を置いて帰ることにした。





「それで朝になって見てみたら罠が作動した後があったんだ」
「へえ、じゃあ三太を捕まえたのかい」
「それが逃げられてたんだ。しかもそこで帰っていったみたいで第二、第三は起動してなかった」
「だからやるなら最初から魔法仕掛けの強力なのをやるべきよって言ったじゃない」
「でも見抜かれてへそ曲げられたら何も貰えないじゃないか」
「……そもそも罠を仕掛けなければいいじゃないか」

 魔理沙と霊夢は昨日の罠について反省と改善について話し合っている。
どうやら来年こそは全力で捕まえに行き、その賄賂たちを全部せしめる気でいるようだ。

「やれやれ、三太も苦労するね。ああそうだ、ということは今年は何ももらえなかったのかい?」

 できる限り無表情を作りながら質問をする。ふたり曰く、僕は表情に出やすい質らしいので少し心配だった。
ふたりともニヤリと笑いながらこちらを振り向く。
バレていたのかとドキリとしたが、違うらしい。

「それがね、気前がいいことにプレゼントが置いてあったの」
「三太って案外本当にいいやつなのかもしれないな」
「へえ、中身は見てみたのかい」

 揃って首を振る。

「せっかくだしここで開けてみようと思って持って来たぜ」
「ふたつ並べて置いてあったからどちらがどちらのか最初はわからなかったけど、これを見れば一目瞭然よね」

 取り出した箱には驚くべき装丁がなされていた。というか僕がそういう装丁をした。

片方の箱は黒、そこに白いレースのリボンが巻かれていた。
もう片方は紅、同じく白いレースのリボンで飾られている。

「なるほど、それは分かりやすい。じゃあ開けてみてくれ」



 霖之助はちらりと自分の箪笥を流し見る。
そこには、結局里の子供達と慧音にしか見せることのなかったサンタ服が仕舞われている。



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トラックバック(0)   コメント(0)   2009.12.27    [ Myカテゴリ:東方SS ]

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